Gateau
フロマージュ クリュ
派手な印象を持つ他の商品に比べてインパクトは無いが、この商品こそが実はこのお店のスペシャリテ。スフレとクリームチーズの2層仕立てのチーズケーキで、生クリームも加えられたクリームチーズはデンマーク産とフランス産をブレンド。日本人が大好きな、すーっと消えゆくような理想的な口溶けでほのかにチーズの塩気も余韻として残る。レモンクリームの酸味、バターの風味が効いたアーモンドサブレの香ばしさが絶妙のアクセントとなってねっとり濃厚なミルキーさながら後味をひかない。
サントノーレ トンカ
お店の方と少し話す機会があって クラシックシリーズやってるし、サントノーレが大好きだから自分をスイーツ道に引き込んだパリセのサントノーレを超える安食さんらしいサントノーレが是非見たいです!とお願いしたことがあったんだけど、しばしの刻を経てようやく完成してくれた作品は想像を超える絶品だった!
花をモチーフにしたかのような安食さんらしい華やかなビジュアルのサントノーレはトンカのテイストがメイン。ここ数年でみかけるようになったトンカ豆だけど、バニラのような杏仁のような香しい香りが特徴的で、この華やかなデザインにぴったりな印象。いまどきなつかしいアラザンもかわいさを演出。あふれんばかりのシャンティの下にはバリバリな食感がたまらない飴がけシューが。アジキ印のおいしいカスタードも中央にたっぷりと、底にはこちらも丁寧にあめがけされたバター香るパイが土台となっていて、こちらのお店の焼き菓子の素晴らしさまで伝わってくるかのような豊かな風味。
構成、技法など安食さんも持てるすべてが表現されたかのような逸品で、お店を象徴するかのようなアイデンティティさえ感じ取られた。作るのが大変なサントノーレの醍醐味はシュー、カスタード、生クリームが一度にふんだんに味わえることにあるけど、細かい技術の積みかさねで繊細に素材を組み合わせていく様が窺えて食べてて思わず感嘆してしまった。お店自体コンセプトは違うけど、シェフ同士仲がいいパリセとこちらの2つのサントノーレ。どちらが一番ではなく、どちらも自分にとって一番のサントノーレに。
サオトボ
デフェール時代からの人気商品で、ひときわ目立つフォルムからも間違いなく「YUJI AJIKI」を一番代表する作品。
フランス語で噴火口と名付けられたこのケーキには安食さんらしい遊び心溢れた面白い画期的なギミックがあって、実はレンジで温めて食べるケーキになっていて、噴火口の名前そのもののようにマグマのごとくショコラが流れ出してくる仕組みが組み込まれている。 内部にはガナッシュなどとともにアクセントとなるようナッツなども忍ばされているんだけど、サイズがかなり大ぶりなこともあって、途中で飽きが来るというか総じて印象的には甘すぎるという印象を持った。安食さんといえば日本でも一番というくらい複雑で繊細な味が持ち味だけど、ギミックとか見てると家族で楽しんでもらう、子供たちに食べて欲しいという思いで作られたモノなのかも。
サオトボ ルージュ
「SWEETS garden YUJI AJIKI × アカシエ」コラボ商品。「YUJI AJIKI」を一番代表するスペシャリテが興野シェフの手によって華麗にドレスアップ。ヒカリエでの催事限定商品ながらお店でも通常販売されることに。
フランボワーズとショコラという定番の組み合わせにピスタチオの風味がプラス。「サオトボ」はテイスト的に子供向けかなとも思ったんだけど、フランボワーズが加わることで酸味がいいアクセントとなって飽きることなく最後までおいしく食べることが出来る。味、デザイン共にもはや芸術。
ショコラフランボワーズ
ショコラとフランボワーズの定番の組み合わせながら安食さんらしい技術と繊細さを持って仕上げられた品の良さを感じる一品。
重みが異なる2つのショコラのスポンジと、ビターなガナッシュ、スイートなショコラシャンティの組み合わせ。ショコラ自体からも酸味を感じるけど、フランボワーズのコンフィチュールが忍ばせてあって香りの良さと共に全体的なキレの良さも感じさせる。口溶けの良さ、バランスの良さとショコラのケーキはそのお店の基盤ともなるケーキだけによく練られた作品。
あまおうのタルト
安食さんらしいタルトの概念をぶちこわすような美しさと力強さを持った絶品タルト。あまおうの持つポテンシャルを存分に味わえる巨大なあまおうがごろごろと入り、タルト部分にも一緒に焼き込みがされているのでまさにイチゴ尽くし。メレンゲはサクッと、シャンティとあまおうと共に味わっているとひと味違ったショートケーキのような感覚。あまおうは実際食べてみると甘くないのが多いけど、フレッシュで甘みも強くおいしかった。食べ進めていくとつなぎのようにカスタードが現れ、ここからはタルトとしての表情が。ザックザクで食感のいいタルト生地の中には絶品で知られるこちらのクレームダマンドがたっぷりと入り、タルト生地に練り込まれたあまおうの風味と相まってイチゴを用いた焼き菓子としての味わいが存分に。
フレッシュケーキに焼き菓子、安食さんの作品は複雑な構成を持つことで知られているけど、これだけの豪快な素材の使い方をしながらも全体のトーンが破綻することなくバランス良くまとめ上げられているのが凄い。
イヴェール
季節によって変わるこちらのタルト。冬はイヴェール。
完成度では随一と評される逸品。すでに商品として完成してたのにデザインに手を加え更に華やかな雰囲気に。ケーキ食べてていつも思うけど、デザイン専攻ってわけでもないのにパティシエさん達がこうした素晴らしいデザインを考えつけるのが凄くも有り不思議でもある。安食さんは建築家の家系だったと思うけど、印刷物にしろWEBにしろケーキにしろ表現媒体がかわるだけでやってるプロセスは一緒なのかな。味の構成だけでも大変なのに。
飾りに過ぎないはずなのにこのホワイトチョコだけでもう絶品。ワインでフランべされ、キャラメリゼをまとった甘酸っぱくもほろ苦い紅玉の強烈な存在感に負けない、安食さんのスペシャリテでもある酸味を効かせたねっとり後引くテイストのクリームチーズが組み合わさって脳にガツンとくるようなとてつもないおいしさ。アクセントとしてホワイトチョコでコーティングされたザックザクで香ばしいアーモンドタルトをコントラストの効いた甘酸っぱい紅玉と濃厚なチーズクリームで包み込んでいく過程のハーモニーが素晴らしい。
プランタン
「SWEETS garden YUJI AJIKI」のシーズナルな逸品。冬のイヴェールの後はプランタン(春)が登場し、7月からはエテ(夏)へ装いを変えていく。絶品のクリームチーズ、アーモンドタルトという構成はシリーズを通じて共通し、フルーツがその時期の旬の物へと変わっていく。このプランタンはフランボワーズ、ストロベリー、ブルーベリーのフレッシュな果肉とコンフィチュールが用いられたベリーのタルト。イヴェールは紅玉だったけど、こちらもベリーの爽やかな酸味が絶品のクリームチーズと絡み合って後引くおいしさ。
スイーツガーデン
お店の名が冠せられた色合いのかわいい春らしい色合いのケーキ。パステルカラーな色彩といいこのお店のスタイルを表現しているかのようなアイテムで、オープンからしばらくはデフェール時代からの作品を継続して売るスタイルだったので鮮烈に登場した待望の新作だった。
甘酸っぱくも濃厚なフランボワーズのバタークリームにピスタチオのビスキュイも風味の点で負けることなくバランスがいい。上部には砕いたアーモンドがたっぷりと、色合いや食感のアクセントとしてだけでなくコーティングされていることによって効果的に酸味を効かせている。普通ならここで終わりだけど、安食さんらしいひと手間として最後の層にさっくさくのショコラの層を加えることで味に深みと食感のアクセントを加え、トップの軽さから順々に味わいを深くしていくことで全体としての味の印象を引き締めている。お店の名を冠しているだけあって特別な思いが込められた作品だと思うけど、こうすればこうなるよってわかりやすく提示してくれているかのような、食感、香りといった食べる人への心遣いが垣間見える。
ミラネーゼ
「スイーツガーデン」のようにこちらのお店らしくメルヘンな世界観を纏ったプチガトー。ピスタチオとショコラの濃厚なコクと甘みに3種のベリーソースがアクセント。ピスタチオが濃厚でぼけて無く、ショコラとのハーモニーがたまらない。きちんと甘酸っぱくメリハリ効かせたベリーもコンポート状になってて果肉ごろごろ、ソースとろっとろで流れ出す演出が。最後の一手間がこちらのお店らしく、底の部分にはザックザクの食感とナッツの風味が余韻として持たせてあって計算されたバランスの良さを感じさせる。
フレーズ
自分がショートケーキを買うときは大体そのお店のアイテムを一通り食べた証でもあるんだけど、こちらのお店のショートケーキはイチゴがハートの形になっていてとても印象的。日本人が一番好きなケーキであり、誰が作っても無難においしい故に作り手にとっては実はなかなか難しいケーキなのかもしれないけど、安食さんのショートケーキではアジキロールでもおなじみのようにスポンジの力強さが印象的。ただ、バランスの取れたおいしいショートケーキではあるものの、「あの安食さんがつくった!」という特徴やフック的なものが見受けられなかったのがちょっと残念かな。
トロピカルショートケーキ
マンゴー、バナナ、ゴールデンキウイが用いられた夏だけのスペシャルなショートケーキ。熟したバナナの濃厚な甘み、強烈な甘みの中にほんのり爽やかな酸味を持つゴールデンキウイ、アクセントとして全体を引き締めるトップに飾られた甘酸っぱいマンゴーソースと、それぞれ特色のある素材のセレクトがすばらしい。ショートケーキに合うのはイチゴだけって言うのはセオリーではあるけれど、このトロピカルな組み合わせも素晴らしい。 素材を引き立てる雑味のないクリームもさることながら、なんといっても安食ロールでおなじみの市販品では絶対出せないであろうきめ細やかなこのスポンジがあるかぎりスペシャルでオンリーワンなショートケーキであるのは間違いない。
ミルクレープ
美しいフォルム。いまや安食ロールよりもレア?
手間が掛かりすぎて数作れないこともあって週末限定、個数限定の一品。開店後5分で売り切れたことも。
スペシャルな日などに振る舞われることがある貴重ながら大人気の安食さんのクレープを手に取りやすい形でと誕生した「ミルクレープ」
結構な大きさで層も20層近く重ねてあるという力の入れよう。
思わずニコニコしてしまいそうな生地のもちもちっとした食感は安食さん以外では作り出せないレベルかも。
ただ、生地のインパクトが強烈すぎてクリームの印象がまったく残らないのが残念。 リキュールなり酸味なりといったアクセントがないので大ぶりなサイズとも相まって味がだんだん単調に感じられてしまうきらいも。 たぶん生地の持つ特徴を全面に押し出す故に、あえてクリームの存在を弱めているような気もするけど、さらなる改良が加えられてくといいなぁ。
モンブラン
お気に入りのモンブラン。ラム酒をしっかり効かせたフランス産マロンペーストの品のある風味とミルキーなシャンティの素晴らしきマリアージュ。とろけるような口溶けがたまらない。アクセントとなる底のメレンゲもサックサクで期待通りの素晴らしい食感。見た目も美しく、仏栗を用いたモンブランとしては理想型だと思う。本格的なモンブランを食べたことがなかったとしたらかなりのインパクトを受けるはず。
ハニーハント
よく打ち合わせで利用している、お店の前にあるデニーズのキャラパンを食べて感動した安食シェフがキャラパンの味の組み合わせを元に創り出したという逸品。 ケーキはかなり食べてきたと思うけど、正直こんなに素直においしさで感動できるケーキにまた出会えるとは思わなかった。大切な人だけに教えたくなるケーキ。蜂蜜ってクセありそうだし、ケーキの素材として用いているのもあまり見聞きしないような。アイデアは拝借しちゃってるけど、デザインといい、世界でただ一人安食さんにしか創り出せない創造性に溢れている。
蜂蜜を入れた壺を模したデザインだと思うけど、構成自体はキャラパンと同じ感じ。
バニラが香るクレームブリュレを包み込むようにクセもそれほど感じない蜂蜜特有の優しい甘さを持ったハチミツのムースでコーティング。ふわふわのメレンゲで囲われた上部にはトロトロのキャラメルソースがたっぷり。
スプーンを入れてくとキャラメルソースがトローリと流れ出し、それぞれ甘さの質が違うクリームブリュレとハチミツのムースとの甘みの洪水とも言うべき三重奏のハーモニー
思わず「うまっ!」と言ってしまう
底にはキャラパンで言うパンケーキのかわりにメープルシロップを染みこませたシナモンの風味を感じさせるスポンジで味の輪郭を締めてくれる。
ちょっと事情があって二週連続で安食さん詣でとなったけど、先週感動したモンブランが想定内の100点なら、このハニーハントは想像以上の100点だった。
お店の方にパリ セヴェイユを超えるサントノーレぜひ見せてくださいってリクエストしちゃったけど、新作をぞくぞく構想中みたいなので楽しみに待ちたい。このお店のケーキは全種類制覇する予定。
ハニーハント
このお店の凄みがかなりわかりやすい美味しさで表現されているのでユウジアジキで最初に買ってみるべきケーキだと思う。
ガツンとくる濃厚で風味豊かなハチミツのテイストの広がり方が凄い。超濃厚。中からはバニラのクレームブリュレが現れフレッシュで柔らかな異なる甘みをプラス。上部のキャラメルソースを覆っているのはふわふわのメレンゲでとろっとろなんだけど、ムース、クレームブリュレと重なり合って凄まじい味のハーモニーと共に消えて無くなる口溶けの良さが素晴らしすぎる。底にはこれまた異なる甘みを持ったメープルシロップでひたひたになったスポンジが現れクセある甘みに虜になりそう。それぞれかなり自己主張の強いパーツを味わいつつ、食べ進めるごとに次第にキャラメルのソースが流れ込んできて、その香ばしくも甘みと共にしっかり苦みも効かせたコク深いテイストが強烈な余韻を持って一つにまとめ上げていく。まさに銀河系と呼ばれたあのレアルマドリーのようなケーキと言えるかも。キャラメルソースに浮かぶチョコボールも食感のアクセントとしてあると思うんだけど、こんなに小さいのにこの世で一番美味しいチョコボールかも。テイストに食感にとまさに極上でとにかくすべてにインパクトが。個性の異なる甘みが次から次へと押し寄せてきて悶絶するかのよう。
あまおうのシブスト
あまり印象が残ってなかったんだけど、ひさびさに食べたら奥深い一品だった。こちらのお店はブラッシュアップを怠ることなく進化し続けている。
しっかり仕上げられた苦み走るキャラメリゼ。ゼラチンとイタリアンメレンゲが入ってるかららしいけど、ふわとろっとしたかなり独特のシブストクリームの食感が楽しくキャラメリゼのパリパリ感と良いコントラスト。あまおうは正直味の部分で優れているとは思わない名前だけのイチゴって個人的な印象だけど、たっぷりと入って強めの酸味がキャラクターの強い素材の間で爽やかなアクセント。
ここからは安食さんの真骨頂って感じだけど、パーツそれぞれが主張があるのであまおうを挟んでまるで別のケーキを味わってる印象に。ここからは趣変わって力強い印象。
バターリッチで香ばしいパイ生地に極上カスタードの組み合わせかと思いきやなんかやたら美味しいクリームも。チーズのテイストがするけどチーズクリームを使ってるみたいで後引く美味しさ。シンプルでクラシカルなプティガトーもアイデアと技次第でここまで印象深くなる。
ポロネーズ
ここ数年あちこちのパティスリーで伝統菓子への回帰の流れが続いているけど、こちらは安食流クラシックシリーズ。「ポロネーズ」はポーランド人っていう意味らしいけど、ヨーロピアンテイスト溢れるデザインが美しすぎてショーケースで一目見て虜に。
「ポロネーズ」といえば絶品のオーボンヴュータンのを思い起こすけど、見た目のかわいさに反してお酒の効かせ具合や焼きなどなにげにワイルドな印象で、こちらのは対照的に洗練された女性的な印象。メレンゲの食感で「しゅわ」はよくあるけど、こちらのは「しゅわとろ~」と余韻が残る感じ。
安食さん流のアレンジとしてオレンジのテイストが中心となっていて、オレンジシロップがひたひたに染みこんだブリオッシュ生地の中にはオレンジ、カスタードが入っていて、濃厚な甘さの中にオレンジの香りと果肉の爽快な爽やかさが加わって食べてて心地いい。底にはフルーツコンフィが忍ばせてあって、さらにフルーティな食感が増していく。自分が酒飲めないってのもあるけど、こちらではラム酒ではなくキルシュが用いられているので酒の風味がちょっとクセに感じたかな。
マカハ(MAKAHA 4)
こちらのお店の夏の人気商品。リファインが加えられ続けて今はMAKAHA ver.4。自身がサーファーでもある安食さんがハワイ伝説のサーフポイントをイメージして作られた夏にぴったりのトロピカルな一品。岩礁を模したような上部のメレンゲはサクッシュワと淡く消えていく食感が良く、ココナッツの風味が余韻として残る。構成は杏仁の香りのアーモンドダクワーズにマンゴー&パッションフルーツ、キャラメルムース、ココナッツムースが層となって重なり合っていて、シャンティ自体も甘みが抑えられている。甘さよりは苦みが引き立てられたあっさりとした印象のケーキで、颯爽とした風貌を持った爽やかな漢のケーキといった趣。
ジヴァラ
とにかくビジュアルが美しすぎる。まさにチョコレートのお花。ショコラに力入れてるところなんて特にそうなんだけど、色味が地味な分だけあってショーケースやプチガトーからあまり華やいだ雰囲気を感じないんだけど、さすが安食さん。生産量は多くないものの、高品質なモノに特化し、製菓業界ではプレミアムな存在となっているフランス・ヴァローナ社のジヴァラを使用。豊かに広がるミルクチョコのテイストに苦みを十分効かせている。食べ手を驚かせるなにかを仕込んでくるのが楽しみになってくるこちらのお店のケーキ達だけど、濃厚なチョコを味わっていると不意打ちに現れるチョコフレークのサクサク感のアクセントが素晴らしすぎ。スポンジには栗が用いられ、よくあるショコラケーキとはひと味違う深みのある味になっている。
フォレノワール
ここ数年パティスリーで目にするようになった伝統への回帰。とはいっても洋菓子はヨーロッパが発祥な訳で、できあがったモノには日本人であるパティシエそれぞれの想いやアレンジが加えられているわけだけど、日本人の特徴でもある勤勉さ故に本国のパティシエ達よりもより深く、より熱心に研究されているとも言われたりもする。ヨーロッパの片田舎にしかない郷土のお菓子が日本のパティスリーに普通に並んでいたりして現地の方が驚くくらい。
安食さんのお店でもこうした流れを汲んではじまったのが「クラシックシリーズ」
デザインが安食さんにしてはちょっと個人的にはしっくりこないけど、このシリーズの最初を飾るのがチェリー好きにはたまらない、こちらの「フォレノワール」
自分もチェリーのフレーバーは大好きなのでショーケースにあれば選んでしまう「フォレノワール」はドイツの伝統菓子。
ちょっと堅めに仕立てられたシャンティは甘みが抑えられ、花びらの装飾のようなショコラやあえて香りづけ程度に使用したというキルシュが染みこまされたココアスポンジもビターなテイスト。チェリーが好きな一番の理由でもあるチェリー特有の肉感がアクセントになってるけど、甘みを感じるのはショコラムースくらいで、酸味、苦みのバランスの良さを味わうことのできる大人向けの仕上がり。
フォレノワールフレーズ
あまり好みでは無かったフォレノワールのデザインもイチゴを身に纏ってドレスアップ。かなり高さがある。
チョコ詳しくない自分でもはっきりと美味しさが分かる深みが。チェリーでは無くフレーズなので中もイチゴ。カカオスポンジにカカオムースとビターで深みのあるショコラをフレッシュなシャンティが包み込み素晴らしいハーモニー。
美味しいケーキ屋さんはほかにもあるだろうけど、対話のようなものすら感じさせるなにか違ったものを感じさせてくれるけど、こちらのケーキは一手間では無くさらに踏み込んでそこから二手間も三手間も情熱を注いでいる印象。
アルモニー
ハーモニーという名の、「SWEETS garden YUJI AJIKI」の持つ世界観を端的に表した、おとぎ話の中から出てきたかのような食べる「アロマ」なケーキ。スプーンを入れると流れ出すカモミールのアングレーズソースと外側を覆うショコラムースとのハーモニー。口溶けも味も優しくそして素晴らしくおいしいショコラムースにカモミールの香りがさりげなくアクセント。ふわふわっとしたおとぎ話の世界に浸っていると、不意に強烈に嗅覚を刺激する香しいジャスミンの香り。テイストとしてのまとまりを引き締めるようにジャスミンのクリームブリュレを受け止めるショコラスポンジと底に敷かれたザクザクしたサブレが食感でもいいアクセントとなり、クセの強い素材同士を組み合わせつつも、味、香り、食感を高次元で調和させる「YUJI AJIKI」らしい繊細さを持ってスイーツとして完成させている。
マントショコラ
日本一とも評されるパティスリー、ユウジアジキ流チョコミント。ガツンとミントが来るのかと思いきや思ったより優しい印象。ショコラムース、ショコラプリン、ミント&ライムのムースとジュレの組み合わせ。
甘みよりもカカオの風味をより感じさせるショコラにミントとライムのフレッシュな爽やかさが加わった大人なチョコミント。クリーミーさの中に潜むハーブの香味が鮮烈。
みーみのみみ
世のロールケーキの中でも一番注目されてると言っていいかもしれない安食ロールよりもさらに超レアな「みーみのみみ」
安食ロールの切れ端をお得なお値段で買えるものなんだけど、安食ロールでさえ入手困難なのに値段がお得な切れ端ということでさらに入手困難な一品。堂島ロールはクリームが最強でも生地がいまいちって弱点があるんだけど、この安食ロールはきめ細かいふわふわのスポンジに蜂蜜が練り込んであってまさに夢見ごこちな食感と風味。 こんなきめ細かいスポンジなかなか味わえない。ニュアンス的にふわふわじゃなくてふわっふわ。
みーみのみみ マロン
あるかな~?と行ってみたら運良く出会えた「みーみのみみ」のマロンバージョン。マロンはただでさえ数が少なく人気の安食ロールの期間限定バージョンなのでそれはもう凄い人気だけど、さらに一日数個と数の少ない「みーみのみみ」なのでもう激レア。安食ロールは必ず安食さん自ら行程に加わって仕上げられているほど入魂の一作だけど、このマロンもその名に恥じぬ出来映え。真ん中のクリームには刻んだ栗、生地とカスタードの代わりにもマロンが用いられていて、噛みしめる度に生地の力強さと共に和栗特有の苦みと風味が口の中いっぱいに広がってくる。シャンティは量的には少なく感じるけど、食べてみるとその感動するまでの鮮烈なフレッシュさに店まで足を運ぶことの重要さに気がつかせてくれる。
安食ロール
ロールケーキランキングなどで1位に輝くことも多い、あの安食さんが満を持して発表した安食ロール。
時代を先見したかのようにスポンジのおいしさを味わうタイプのロールケーキでとにかくふんわり香る卵とクリームの香りがたまらない。しっとりまるでケーキを食べてるような質感。クリームは生クリームにカスタードが甘みの底上げをしてるものの、もっと主張しても良いかもしれないけど、生地の風味、食感を味わうためのロールケーキなので考えられたバランスなのかな。とにかく他所では味わったことのないようなふわっふわの生地の食感。まさにオンリーワンのロールケーキ。
クレームブリュレ
恐ろしいほどのおいしさ!カラメルの層を割るのが醍醐味なクレームブリュレだけど、ジャリジャリいうほど底に溜まったバニラビーンズもものすごい量。味的には似てるけど、プリンとクレームブリュレの違いは、プリンが全卵と牛乳で作られているのに対して、クレームブリュレは卵黄と生クリームで作られている。とろけるプリンは卵白を使わず卵黄で作られているからあそこまで風味が出るけど、そこに牛乳ではなく生クリームを用いて作られているのだからその濃厚さは押して測るべし。
ただでさえ絶品と言われているこちらのプリンよりもさらに濃厚なクリームはおいしさが後を引いてまとわりついてくるようで幸福感が凄い。
シュー・ア・ラ・クレーム
結構大ぶりのサイズでうれしいなと思ってたらクリームがみっしりという訳でもなく、中が空洞多めかも。しっかりと焼き込まれたシュー側にクラッシュアーモンドがちりばめられ、ザクっとした食感とともにアーモンドの香ばしさを楽しんでいるとバニラの香り、風味が豊かな絶品のクレームパティシエールの甘みが口の中へ広がってくる。こちらのお店のカスタードはほんとうにおいしい。
シュークリーム食べた~い
シュー・ア・ラ・クレームが大人向けなら、こちらは子供に食べさせたいママの味!?クッキーのようなさくさくしたシュー皮にこちらはバニラを用いず、フワフワッな食感に卵の風味が濃厚なカスタードクリーム仕立て。
家庭的な味を残しているというか、場所柄こちらでは家族連れの姿もよく見るのでネーミングから見てもちびっ子が好きそうな味にしてるのかな。
エクレールカフェ
安食さんらしい惹きのあるカスタードはコーヒー風味で更に深い余韻が。こちらのお店はちょっとしたモノでもとんでもなく美味しいけどアジキ版チョコボール美味しすぎ。シュー皮もさっくりと、ナッツも一手間シュガーコーティングがされていて、香ばしさと共に食感や甘みで良いコントラストが。ユウジアジキが手がけるエクレアはさすがの仕上がり。美しい。
ジャージープリン
安食さんのプリン3兄妹を食べ比べ。発売再開を待ってたけど、このジャージープリンはコストと需要の関係?から幻となってしまうのかな。
濃厚な味わいで知られる希少なジャージー乳のミルクを使用したプリン。バニラは不使用。スタンダードとはまた違ったテイストの牛乳の味わいがかなり前面に出てて、まさにジャージー乳の風味を味わうためのプリン。プリンというよりはクリームといった方が適切かも知れないプレミアムプリンのようなとろとろのタイプではカラメルがかえって味わいの邪魔に感じることもあるけど、プリンとカラメルとの絡みは3つの中でも一番で一層美味しくなる。
プレミアムプリン
プレミアムという冠に恥じない、明らかに深みが桁違い。食べ比べしないと気付きにくいかも知れないけど、スタンダードが物足りなく感じるほど。
バニラビーンズがたっぷりで底に溜まってるのがじゃりじゃり言うくらい。生クリームもたっぷり入ってるからプリンというよりはクリーム的。市販品では出会えないようなパティスリーでしか食べられないリッチなテイスト。
スタンダードプリン
とろっとろクリーミーでたまご感、バニラ感のバランスがよく素材の味を引き立たせてある感じがあって牛乳の風味も感じるし、それぞれのプリンの要素をコンパクトにまとめた印象。食べ比べしなければスタンダードプリンでも十分おいしい。味わい的にはスタンダードプリンの上位版がジャージープリンに感じる。
タルトレット・シトロンヴェール
シトラスらしい主張があってお気に入り。夏向きかな?
イタリアンメレンゲにするとメレンゲに水気を含まず成形できるみたいだけど、メレンゲにもほんのりレモンのような酸味が。サクサクのタルトに、甘みを抑えたホイップとメレンゲの組み合わさったかのような独特な食感が良い。
特筆すべきがライムを使ったクリーム。独特のクセがあってレモンのような痛さを感じさせるようなキレのある酸味ではないけど、強烈でありながら甘いケーキでは決して味わうことの出来ない心地の良い酸味の持つ素晴らしさを存分に味わえる。飾りであるはずのレモンピールも鮮烈なアクセント。
ピティビエ
こちらのお店は生菓子より焼き菓子の方が実はおいしいって話もあるけど、実際、焼き菓子やヴィエノワズリーの方がひとつひとつのインパクトがかなりあるような気がする。腕のいいところほどシンプルなモノがストレートに味として響いてくるからかな。シュークリームとかこれもそうだけど、美しい巻きではあるものの若干スタイルがいびつなものがあったりして安食さんのところでさえ個々に誤差がでてるのにいつみても完璧な「Paris S'eveille」のすごさを思い知る気持ちだけど、どちらも甲乙つけがたくNO.1に好きなお店。味の素晴らしさは言うまでもなく、ラム酒の効いた感動するまでのクレームダマンドのおいしさに悶絶しそうになる。パイの焼き加減も絶妙で、サックサク。「Paris S'eveille」のクイニーアマンも最強だけど、こちらのクレームダマンドも最強!
Viennoiserie
クロワッサン
この層の美しさたるや。パティスリーながらブーランジェリー顔負けの至高のクロワッサンとして知られるこちらのクロワッサン。安食さんはビゴにもいたことがあるけど、パティスリーのクロワッサンとして理想型の逸品かも。外はザクッ、中はしっとり、と理想的な食感。手に持っただけでバターの香りが漂ってくるけど、パティスリーらしくバターをふんだんにつかっている印象。塩気も適度に効いている中、特に印象的だったのがふんわりとした甘みがきちんと感じられたところ。何かを足し引きしてしまったら崩壊してしまいそうな繊細なバランスが見事。美味しい。
クロワッサン ダマンド
この世にこんな美味しいものがあったのかと人生でもベスト10に入る大好物なクロワッサンザマンド。黄色と言うより黄金と言った方が適切な美しく輝くクレームダマンドがもう絶品!まるで蜜がしみだすごとくジュワッとした濃厚な甘みとコク豊かなクレームダマンドには色気すら感じるような香しいラム酒がぷんぷん。パティスリーのヴィエノワズリーらしくバターリッチなクロワッサン生地は大切な食感も残しザクザクと楽しい。アーモンドの香ばしさ、たっぷりと振り掛けられた粉糖、生地の食感、そしてメインの香しいクレームダマンドが重なりあった極上のマリアージュ。ベースが安食さんのクロワッサンなのでその時点でワンランク上の仕上がりになるのは当然だけど、こちらのお店に寄ったら必ず買って帰るくらいお気に入りの最高峰のクロワッサンダマンド。「ユウジアジキ」がおいしいのはわかりきった上でその期待を上回るはじめて食べた時の衝撃はあのパリ セヴェイユのクイニー・アマンに匹敵!
クロワッサン ショコラ
日本でも最高峰のこちらのクロワッサン生地とショコラの組み合わせなんだからおいしくないはずがない。サックサクな生地の食感の素晴らしさにバターの豊かな風味。ヴァローナ社のショコラはビターなテイストで、量は少なめながら存在感はある。シナモンがスパイスとして効かせてあるのでちょっと苦手な人は気になるかも。
クロワッサン・アンショワ
アンチョビの入ったクロワッサン。生臭くないのかなとか食べる前は気になってたけど、かなり引きが強い味でこれはおいしい。アンチョビが少なく感じるけど、濃厚なコクと強めの塩気がアクセントになっててバランスが取れてる。総菜パンというには上品なテイストで、ワインなんかと合わせたらたまらないかも。リピートしたくなる、印象に残るクロワッサン。
クロワッサン タニシ
評判が知れ渡ってしまって以来、クロワッサン自体人気がありすぎて買えなかったりするんだけどその中でも不定期に店頭に現れるのでレアな存在だったりする「タニシ」。 サクサクというよりはバリバリといったハードな食感で、塩気も効いた後から広がるバターの風味が心地良い。
安食さんのケーキのように主張は強いものではないけど、こちらのクロワッサンは食感だけでも食べる価値がある。